Thursday, April 10, 2008

新日石、出光の国内2強動く 激動の石油業界 元売りサバイバル

新日石、出光の国内2強動く 激動の石油業界 元売りサバイバル
- 08/04/09 | 17:33

 石油元売り業界が暫定税率失効に伴うガソリン値下げの問題で揺れていたさなかの3月後半、生き残りを懸けた業界大手の新たな動きが相次いで表面化した。新日本石油・九州石油の統合と、出光興産のベトナムでの製油所・石油化学プラント建設投資だ。

 最大手の新日本石油は10月をメドに九州石油を事実上、吸収合併する。九州石油(非上場)は九州、関東を中心に674カ所で「コウノトリ」を意味する「ストーク」ブランドの給油所を展開。大分県には九州唯一の製油所(原油処理能力は日量約16万バレル)を有している。

 出光は三井化学やベトナム・クウェート両国の国営石油会社と組む。出光主導で日量20万バレルと、日本ならば上位級の原油処理能力を有する製油所などの建設にベトナムで乗り出す方針だ。建設費用は約5800億円。出光の投資額は同600億円に達する見通しである。

国内需要が大きく低迷 新日石は製油所廃棄か

 両社の決断を後押ししたのは石油製品の国内需要低迷だ。経済産業省の生産動態統計によれば、ガソリンの国内販売は2005年をピークに2年連続で減少。昨年には6000万キロリットルを割り込んだ。07年の原油処理量は約2億3200万キロリットル。1日当たりの需要をはじき出すと400万バレル程度だが、国内製油所の原油処理能力は日量約480万バレルで、全体では設備過剰状態に陥っている。

 最近の原油高がこれに追い打ちをかける。指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は1バレル=100ドルを突破したが、川下の給油所などへの価格転嫁が追いつかず石油製品の利幅は縮小。大手各社の同部門の損益は在庫評価益を除いた実質ベースで赤字となり、足を引っ張っている。

 08年3月期は新日本石油が280億円の実質経常赤字、出光興産が110億円の営業赤字(経常益ベースは非公表)を見込む。が、08年1~3月期の原油価格は両社の前提水準を上回って推移したため、損失額はさらに膨らむ公算が大きい。

 新日石と九石の統合は九石側から話を持ちかけたものだが、新日石側は物流効率化などのメリットを享受できそうだ。新日石はグループ全体で全国7カ所に製油所を持つが九州にはない。九石の大分製油所は水深の深い別府湾に面しており、原油を満載した大型タンカーが入港できるのも魅力。石油化学製品の生産も行っており、「新日石の製油所と比べても競争力は高い」(大和総研の阿部聖史シニアアナリスト)という。

 九石の良好な財務体質も縁組の決め手だ。石油元売り業界は高水準の有利子負債を抱えるが、安全性の目安となるデットエクイティ(DE)レシオ(負債÷自己資本)は、新日石の2・3倍に対して九石は1・9倍(07年3月期)。売り上げでは約9倍の開きがあるものの、「大手他社も凌駕する財務体質を備えている」(木原誠・九石社長)。

 ただ、供給過剰状態の是正は喫緊の課題。新日石の固定資産も増加傾向にあり、非効率設備の削減は急務だ。新たな拠点を手に入れる一方で、「製油所のスクラップも視野に入っている」(西尾進路社長)。

出光に絶好の機会だがコスト増大のリスクも

 これに対して、出光は経済成長著しいベトナムに活路を見いだした。首都のホーチミン市は縦横無尽に走り回るバイクであふれんばかり。ガソリン需要の急拡大を物語る光景だが、実は国内に製油所はなく全量を輸入で賄う状態だ。出光の天坊昭彦社長は「同国での製品販売は製油所建設にかかわった会社にだけ許可される」と販売拡大に意欲を見せる。

 むろん、大型投資にはリスクが伴う。世界景気拡大や商品相場高騰などを背景に近年、資材価格が上昇。人手不足感も顕著で、プラント建設に要するコストは膨れ上がっている。インフレ率などを考慮したとしても、投資額が当初の600億円前後で収まるかは流動的だ。

 かつて約2兆円の有利子負債に苦しんだ同社も、06年の上場などを通じて財務体質は急改善した。それでもDEレシオは07年3月期で3・2倍。相対的に脆弱さが残る点は否めない。製油所などの操業開始は13年末の予定。それまでの間に株式市場などで財務面のリスクがクローズアップされる可能性もある。

 だが、みずほ証券の塩田英俊シニアアナリストは「またとないチャンス」と見る。石油精製はエレクトロニクス業界などに比べれば製品需要変動の波は小さく、日本のような供給過剰状態にないかぎりは、一定のマージンが確保できるビジネス。設備の陳腐化もすぐには進まない。利幅こそ薄いものの安定収益が見込める。つまり、「本来なら製油所建設への外資導入のインセンティブはさほど働かないはず」(塩田氏)で、その分、出光は絶好の機会を得た。

 日本の市場縮小に手をこまぬいていては退路を断たれるだけだろう。国内の販売シェア拡大で価格交渉力を高める道を選択した新日石。リスク覚悟でベトナムに打って出る出光。両社の新たな一歩がライバルを刺激するのは想像に難くない。

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