Monday, April 28, 2008

クローズアップ2008:衆院補選・自民敗北 「総選挙、戦えない」

クローズアップ2008:衆院補選・自民敗北 「総選挙、戦えない」
 ◇「福田後」模索も 崩れたガソリン税信任

 民主前職の平岡秀夫氏(54)が自民新人の山本繁太郎氏(59)に勝利した27日の衆院山口2区補選は、福田康夫首相の政権運営に民意が「ノー」を突きつけたことになり、政府・与党内には危機感が広がった。「政権交代に現実味が出た」と勢いづく民主党に対し、窮地に追い込まれた自民党内では「ポスト福田」をめぐる動きの封が解かれる可能性さえ出てきた。【川上克己、上野央絵】

 27日午後9時半の自民党本部。伊吹文明幹事長は記者団に「追いついたと思ったが、後期高齢者(長寿)医療制度の説明も不十分で不適切だった。『ぬかったな』と思う」と語った。

 「なかなかうまくいかないようですね」。これに先立ち、訪露から帰国したばかりの首相は伊吹氏に電話で漏らし、悔しさをにじませた。

 政府・与党は30日、いったん下がったガソリン価格の値上げにつながる租税特別措置法改正案の再可決に踏み切る。「補選勝利で信任」というシナリオが崩壊した今、与党内には「強行がさらに世論を敵に回す」との見方が出ている。

 道路特定財源の10年延長を前提にする道路整備財源特例法改正案も5月12日にも再可決する。しかし、中堅・若手の一部にある「09年度からの一般財源化方針に反する」という異論が、補選敗北で広がりを持つ可能性が出てきた。敗北の主因の後期高齢者医療制度には党内にも廃止論がくすぶり、首相の政権運営はまさに「いばらの道」だ。

 「民主党が首相問責決議案を出しても、福田さんは総辞職も衆院解散もしない。国会さえ終われば、雰囲気はがらりと変わる」

 参院自民党幹部は強気の読みを展開。首相周辺も「7月の北海道洞爺湖サミットが政権浮揚のきっかけになる」と語るが、いずれも確たる根拠はない。

 首相はもともと「選挙の顔」は期待されていなかった。ただ、敗北を受けて自民党内では「福田さんでは次期衆院選は戦えないことが分かった」(中堅)との評価が出ている。派閥領袖の一人も麻生太郎前幹事長の名前を挙げたうえで、こう言及した。「次期衆院選を考えるなら、『ポスト福田』に無難な人選ではないか」

 「敗色濃厚」となった27日午後7時、首相公邸に2台の車が滑り込んだ。自民党の森喜朗元首相と青木幹雄前参院議員会長で、出たのは約2時間半後。重鎮2人が駆けつける光景は政権の動揺を物語るかのようだった。
 ◇民主、「風」受け高揚感

 「民主党政権の樹立に大きく近づいた」。福田政権発足後初の国政選挙を白星で飾り、鳩山由紀夫幹事長は27日夜、党本部での記者会見で語った。党内には「リクルート、消費税並みの風が吹いた」(中堅)と高揚感が満ちた。

 選挙戦では与党が地域活性化に重点を置いたのに対し、後期高齢者医療制度、道路特定財源、「消えた年金」という「国政3点セット」を前面に掲げて戦った。「国政直結」を強調した中での勝利により、政権交代論が支持されたものと自信を深めている。

 首相問責決議案の参院への提出は、租税特別措置法改正案の再可決直後は見送る。「勝利できたことで選択の幅が広がった」(鳩山氏)との判断だ。

 今後は道路整備財源特例法改正案の再可決をめぐる攻防や、後期高齢者医療制度廃止法案を参院に提出し、効果的な提出時期を探る。

 山岡賢次国対委員長は27日夜、記者団に「政府・与党はまずは後期高齢者医療制度を直ちにやめるべきだ」と語り、後期高齢者医療制度で攻勢を強める意向を強くにじませた。

 1月の大阪府知事選に敗れ、党内には選挙に強いという「小沢神話」への不信感も芽生えつつあったが、今回の勝利で復権。「大連立」騒動、日銀正副総裁人事などを受けてくすぶる小沢氏への不満も当面解消されそうだが、逆にジレンマを抱えたとの見方も。

 「今秋の代表選で小沢氏が3選される可能性は高まったが、かえって衆院解散は遠のいた」。国対幹部は指摘した。
 ◇共産支持層9割が民主に--出口調査

 毎日新聞はJNNと協力して出口調査を実施した。租税特別措置法改正案の再可決への賛否も聞いたところ、「反対」が「賛成」を上回った。

 「反対」と答えた人の投票先は平岡氏が73%で、山本氏の22%を大きく上回った。「賛成」と答えた層は山本氏が77%で、平岡氏が20%と、全く逆の傾向を示した。

 支持政党別の賛否では、自民支持層は賛成49%、反対44%。公明支持層は反対が6割前後に達し、与党支持層にもいったん下がったガソリンの値上げにつながる再可決に抵抗が強いことを示した。

 一方、独自候補の擁立を見送り、票の流れ先が注目された共産党の支持層は92%が「平岡氏に投票」と答えた。【坂口裕彦】

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 ◇出口調査の方法◇

 衆院山口2区の投票所30カ所を無作為に選び、投票直後の有権者に投票した候補者名などを選択式で答えてもらった。回答者数は985人。

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