Sunday, April 27, 2008

「制度廃止まで戦う」茨城県医師会、福田政権に反乱

「制度廃止まで戦う」茨城県医師会、福田政権に反乱
命を犠牲にして医療費を削減

 後期高齢者医療制度が「老人いじめ」と悪評紛々だ。内閣支持率や衆院山口2区補選にも影響を与えているが、すべてが「他人事」の福田康夫首相は見直す考えはないという。こうした中、自民党の有力支持団体・地方医師会に「反対」を唱える動きが急速に広がっている。福田政権への反乱は、都道府県レベルで20を突破したという。真っ先に「制度廃止」を掲げて活動している茨城県医師会の原中勝征会長(68)が狼煙を上げた。

 「人の命を年齢で差別するのは間違っている。この制度は、老人の負担を増大させるだけでなく、日本の親子関係や相互扶助の精神を崩壊させる。老人は決して幸せにならない。制度廃止まで徹底的に戦う」

 原中氏の舌鋒は鋭い。

 同制度は06年、小泉内閣時代に与党の強行採決で成立した。茨城県医師会は内容について何度も問い合わせたが、厚生労働省は「まだ決まっていない」と言い続け、全体像を明らかにしたのは今年3月だった。

 詳細を同医師会で検討した結果、(1)75歳で強制加入という特異性(2)年金からの保険料天引き(3)保険料滞納による保険証取り上げ(4)自由に医療機関を選べない-などに疑問が集中。最終的に「法律の目的は命を犠牲にして医療費を削減するものだ」との結論に達し、3月21日の理事会で反対することを全会一致で決めた。

 今月20日には全県下に「高齢者いじめの制度が許せますか!」という新聞折込広告を入れ、制度廃止を求める署名や意見を求めたところ、全国から賛同する声が殺到しているという。

 世論調査では、後期高齢者医療制度について7割以上が「評価しない」(朝日新聞など)と回答。自民党若手からは「こんな制度とは知らなかった」という信じ難い本音まで漏れる。

 原中氏は「国会議員として恥ずべきことだが、自民党の部会制にも問題がある。議員が法律の中身を知らなくても、各部会が決めれば所属議員は賛成しなければならない」と指摘し、同制度を成立させた小泉政治をこう批判する。

 「日本はかつて調和がとれた助け合いの社会だった。だが、小泉時代の5年間で一気に格差社会となり、人間関係を断ち切ってでも『金を儲けたヤツが成功者』『心など関係ない』という悲しい国になった。社会正義も失われつつある。小泉政治は一種のブーム。本質は『平成の姥捨て山』といわれる制度を成立させたことでよく分かる」

 医師会は、自民党の有力支持団体として知られる。特に茨城県は強固な保守地盤を誇り、自民党厚労族の大物、丹羽雄哉元厚相や額賀福志郎財務相のお膝元だが、原中氏は「医師として『患者を守るため』に行動している」といい、「最近の自民党は2世3世や官僚出身の議員ばかりで、苦労して『国民のために』と議員になった人物が少なくなった。国民の気持ちが分からず、霞ヶ関の役人たちの論理ばかりが先に立っている」と切り捨てる。

 公明党にも「『平和・福祉の党』という看板を掲げながら、自民党の政策を支持していると支持者から見放される」という。

 原中氏はTNF(腫瘍壊死因子)の研究で世界的評価を得ていた東大助教授時代に直腸がんを患い、地域医療に転身した。今回の行動について「気をつけた方がいい」という忠告も受けたが、「20年前に『あと3年』といわれた命。医療のためなら何も怖いものはない」と言い切る。

 茨城県医師会の行動に刺激されてか、47都道府県の中で後期高齢者医療制度に「反対」を掲げる医師会が増えている。原中氏は「20以上の医師会が『反対』で、『賛成』は3つほど。これ以外に10以上の医師会が対応を検討しているようだ」と明かす。

 注目の補選が行われている山口県医師会も「会員医師から『制度に問題がある』という意見が出ており、(反対も含めて)議論していく」と話す。

 それでも、福田首相は21日、「粛々と進めるしかない」と語り、制度を見直す考えはない。制度推進派からは「医療費を抑制しないと社会保障が崩壊する」という意見もある。

 だが、原中氏は「83兆円の一般会計に対し、各省庁が握る特別会計はその数倍(240兆円)。霞ヶ関埋蔵金は50兆円とされる。政治は国民が安心した生活を守るためにある。『社会保障の根本は何か』『国民生活をどう守るのか』を徹底的に議論して、税金をどう分配するか判断するのが首相の職務ではないのか。役人ではなく、国民の声を聴いてほしい」と訴える。

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