Sunday, March 23, 2008

新銀行東京:大前研一氏に聞く 「成り立たぬ」に耳貸さず

新銀行東京:大前研一氏に聞く 「成り立たぬ」に耳貸さず

 経営危機に陥った「新銀行東京」の原型となる銀行設立構想を石原慎太郎・東京都知事に提案した経営コンサルタントの大前研一氏が毎日新聞の取材に応じ「やってはいけないことに手を付けた石原氏の責任は重い」と指摘した。当初、都の膨大な運用資金をメーンバンクの破綻から守る目的で準備を始めたが、知事の一声で「生業(なりわい)として成り立たない」(大前氏)中小・ベンチャー企業支援に舵(かじ)を切ったという。

 大前氏は01年8月、会食の席で初めて知事に銀行設立構想を示した。長く不良債権処理に苦しむ銀行の状況を踏まえ「都の運用資金は日によっては9兆円にもなる。仮に都のメーンバンクが破綻(はたん)した場合、ペイオフで1000万円しか担保されない状況を解決すべきだ」と提言した。

 事業モデルは「独自店舗のないバーチャル銀行として決済業務だけを行う」「預金や手数料などで得た資金は、地盤強化など基盤整備に充てる」--など。知事が関心を示し、当時都の出納長だった大塚俊郎氏(元副知事、現新銀行東京取締役会議長)の下、職員6~7人からなるプロジェクトチームが誕生した。大前氏も無償で指導に当たり、職員も賛同して熱心に研究したという。

 しかし、半年後、最終報告に石原知事から出た言葉は「こういうんじゃないんだよな、僕がやりたいのは」。中小・ベンチャー企業支援構想を突然明かされたという。

 ベンチャー起業家育成の苦労も知る大前氏は「それを生業とする銀行は成り立たない」と説得したが、知事は「都市銀行にできないことをやりたいんだよ」と耳を貸さなかった。大前氏は、すぐに身を引いたという。

 「その後のことは分かりません」と大前氏。結果的にビジネスモデルの失敗で多くの不良債権を抱え、旧経営陣に全責任を押し付けて、400億円もの追加出資案を通そうとする石原知事の姿勢を強く批判する。「卑怯(ひきょう)だよね。やるという意思決定をした責任は一人、石原知事にある。あのとき止められる人間は都にもいなかった」。

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新銀行東京株、損失処理相次ぐ・今期末150億円規模

 新銀行東京に出資している民間企業や金融機関が、同社株で相次ぎ損失処理を迫られている。新銀行東京は多額の累積損失を抱えており、出資した当初の価値が大幅に損なわれたためだ。民間の処理額は2008年3月期までに150億円規模に膨らむ見通し。

 新銀行東京は約84%の株式を保有する東京都のほかに、約40社の民間企業が05年の開業初年度に第三者割当増資に応じる形で合計190億円程度出資した。

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新銀行東京、石原知事「単独再建難しい」

 東京都の石原慎太郎知事は21日の記者会見で、経営難に陥っている新銀行東京(東京・千代田)の単独再建について「難しい」と語り、他の金融機関との資本・業務提携を検討する考えを示した。また追加出資が決まった後に、都が株主としての責任を果たすため、銀行経営を監視する機関をつくる方針も明らかにした。

 提携先については「外国のファンドの方が東京の価値を評価している」と外資系を軸に探す考えを示唆した。ただこれまで国内外の11金融機関に提携を打診、ことごとく断られている経緯があり、交渉は難航が予想される。

 監視機関に関しては具体像を明らかにしなかったが「銀行への助言や情報提供をする」という。都は84%を保有する大株主で、すでに都の元幹部を取締役会議長、代表執行役に派遣しているが、今後さらに関与を強める見通し。

 また石原知事は同行への金融庁の検査については「拒むものではない。金融庁が判断することだ」と述べた。

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新銀行東京への追加出資、都議会「400億円」可決へ

 経営再建中の新銀行東京(東京・千代田、津島隆一代表執行役)に対する400億円の追加出資案について、都議会与党の自民と公明が「都は2度目の追加出資を要請しない」などとする付帯決議を付けて容認する検討を始めたことが21日、分かった。都議会では自公が議席の過半数を占めるため、追加出資の議案は可決される公算となった。

 ただ、これまでの質疑では、旧経営陣の参考人招致が見送られるなど、ずさんな経営の責任解明はあいまいなまま。発案者の石原慎太郎知事や都への責任追及も甘く、税金の再投入を容認する姿勢に、都民の反発が強まるのは必至だ。

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金融庁、新銀行東京への監視強化・追加出資可決へ

 新銀行東京(東京・千代田、津島隆一代表執行役)への東京都の400億円の追加出資案が都議会で可決される見通しになったことで、同行の経営問題を巡る今後の焦点は金融庁による監督や国会での論戦に移る。金融庁は出資案の可決後、早急に再建計画や事業再編などに関する詳しい報告を同行に求め、経営状況への監視を強める方針だ。

 同行への追加出資案は都議会の予算特別委員会と本会議での採決を経て今月中に可決される見通し。ただ、4年後に預金残高を20分の1、貸出金残高を5分の1に減らすなど規模を大幅に縮小して再建を目指す計画には厳しい見方が広がっている。

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東京都主導の大規模計画、「負の遺産」処理に1兆円

 多額の累積損失を抱える新銀行東京(東京・千代田)など、東京都が主導した大規模プロジェクトの処理や経営立て直しのために投入した資金額が、官民合わせて1兆円近くにのぼることが明らかになった。都は財政力を背景に大規模事業を次々と立ち上げたが、ノウハウ不足からことごとく失敗。新銀行では旧経営陣の責任を強調するが、同じ失策を繰り返した都の責任も問われそうだ。

 これらの事業は主にバブル期以降の税収増加時に着手した。都内には大企業が多いため好況時に税収が集中する。豊富な資金を使って始めたが甘い経営見通しや管理のずさんさから行き詰まったものが多い。こうした「負の遺産」に対し、都は追加支援や損失処理を迫られている。日本経済新聞の集計では2000年以降だけでも都や取引金融機関が実施した減資、追加出資、債権放棄などは15件で総額は約9500億円に上る。

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