Saturday, May 31, 2008

精神科医、総合病院離れ 病床2割減、閉鎖も相次ぐ

精神科医、総合病院離れ 病床2割減、閉鎖も相次ぐ

2008年05月29日15時17分

 地域の中核病院などの総合病院で、医師不足から精神科病棟の閉鎖が相次いでいる。02年から4年間で、精神病床がある病院数は1割、病床数は2割近く減った。総合病院の精神科は、通常の治療だけでなく、自殺未遂者やがん患者の心のケアなど役割が広がっている。事態を重く見た関係学会や厚生労働省は現状把握の調査を検討している。

 日本総合病院精神医学会の調査によると、02年に272あった精神病床を持つ総合病院は06年末に244に、病床数も2万1732床から1万7924床に減った。調査後も休止したり診療をやめたりする病院が続いている。

 廃止になっているのは主に地方の公立病院だ。自殺率が12年連続全国1位で自殺予防に取り組む秋田県でも、精神病床がある八つの総合病院のうち、3カ所が入院病棟を閉鎖中。非常勤で維持してきた外来診療も、大学医局の医師引き揚げで厳しい状況にあるという。宮崎県では、四つの県立病院に十数人いた精神科医が昨年末に3人になった。

 精神科専門の医師数は微増傾向だが、厚労省調査では、この10年で診療所と精神科病院に勤める医師数は増加したのに対し、総合病院などは1割減。夜間休日の救急対応などの忙しさから敬遠されたとみられる。また、他科より診療報酬収入が少なく、経営側に負担感が大きいという。

 厚労省は、精神障害者が入院中心から脱して地域で生活できるよう単科精神科の病床数削減の方針を打ち出した。一方、自殺未遂で入院した患者を精神科医が診察すると診療報酬が加算されたり、がん対策基本法で緩和ケアチームに精神科医の関与が求められたりと、総合病院での精神科医の役割は増している。

 水野雅文・東邦大医学部教授(精神医学)は「イタリアは精神科病院を全廃し、代わりに全総合病院に精神病床を置いた。日本は、精神科病院の病床削減は進まず、総合病院の病床が減るという正反対のことが起きている。総合病院の精神科医療の診療報酬を手厚くするなどの対策が必要だ」と話す。

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「一人暮らしで心配」高齢者の帰宅にパトカー頼む病院

 「診察を終えた一人暮らしのお年寄りを、パトカーで自宅まで送ってあげて」。様々な110番通報の中には、病院からのそんな要請もある。

 警察はたとえ緊急性がなくても、「帰宅途中に事故が起きてはいけない」とパトカーを出動させているというのだが……。

 今年2月深夜、東京都内の閑静な住宅街にある警察署は、110番を通じて近隣の病院から、高齢の患者を自宅まで送り届けてほしいと依頼された。不調を訴えて救急車で病院に運ばれたものの、診察結果に異常はなく帰宅してもらうことに。ところが、この患者はタクシー代を持っておらず、一人暮らしで引き取り手もいないという。認知症があることも想定され、同署では「迷子になる可能性もある」と判断し、パトカーを病院に向かわせた。

 警視庁によると、最近、お年寄りの引き取りを求める病院の通報が警察署に寄せられるようになった。認知症などの症状がなく、単に引き受け手がいないというだけの理由で、保護を要請するケースも。ここ2年間で十数件の要請を受けた都内の別の警察署は、「保護する必要のないものが大半だが、問題が起きてからでは遅いので、自宅まで送るようにしている」と説明する。病院に出動すれば1時間程度は、本来は事件・事故など緊急事態に対応すべきパトカーが拘束されることになるという。

 厚生労働省によると、急病やけがなどで救急車を使わずに病院に行った場合、緊急性があったと認められれば、交通費は国民健康保険などでカバーされる。しかし、治療を終えた後の「帰りの足」については、規定されていない。

 交通費用が支払われるのは、条件を満たしている生活保護受給者だけで、ヘルパーによる送迎サービスが受けられるのも、要介護認定者に限られている。

 身寄りがなく、タクシー代の持ち合わせもないような一般の高齢患者については、病院側が自主的に自宅まで送り届けたり、タクシー代を貸したりして対応しているのが実情で、こうしたケースに直面した病院の一部が、警察に出動を要請していると見られる。

 神奈川県内の私立の大学病院は「病院の管理責任として、困っている患者を自宅に送り届けるようにしている」と話すが、埼玉県内の公立病院の事務長は「救急外来の利用者は急増しており、少ない職員で患者の送迎までは面倒をみられない」と本音を漏らす。

 身寄りのない高齢患者の帰宅問題について、同省国民健康保険課の担当者は「国レベルで協議されたことはないと思う」と語り、都内のある区の福祉部門担当者も「福祉と医療の両分野にまたがる課題だが対応する部署はなく、公的な支援も行っていない」と言う。

 都内の医療機関に勤める医療ソーシャルワーカーの女性(48)は、「安易にパトカーを患者の『帰宅の足』に利用するのではなく、病院や行政など関係者がこの問題について議論することから始めて欲しい」と訴えている。

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