電機大手:経営戦略見直し進む 「選択と集中」を加速
電機業界が、事業分野の選択と集中を加速させている。東芝は半導体や原発に、三菱電機は工場の生産システムに注力しているのが、その典型だ。国際競争の激化で巨額投資が各社の重荷になる中、得意とする分野に経営資源を集中する試みはさらに広がる見通し。改革が遅れていた電機首位の日立製作所も改革に動き始めており、電機業界の合従連衡の動きは加速しそうだ。
「より収益性が高いものを増やし、収益を期待できないものはやめる」。26日、東京都内で09年度までの経営方針を発表した日立の古川一夫社長はこう強調した。日立は、「薄型テレビ、白物家電、原子力発電など幅広い事業を手掛け、環境変化に迅速に対応できない」と業界内で指摘されてきた。その日立も、100%子会社で液晶パネルを製造する日立ディスプレイズが松下電器産業とキヤノンの出資を受け入れ、テレビ事業の構造改革に取り組み始めた。
一方、東芝は日立に先駆け、主力の半導体や原子力事業で先行投資し、優位性を築いてきた。中期経営計画では10年度に連結売上高10兆円という「強気」の目標を打ち出し、10年度まで3年間の設備投資計2兆2000億円のうち、1兆円を半導体事業に集中投入する方針だ。
三菱電機も不採算の携帯電話事業から撤退する一方、工場の生産システムを事業の主軸にすえた結果、安定感は電機各社の中で群を抜く。再建中の三洋電機も23日発表した経営戦略で、競争力のある充電池と太陽電池、電子部品の3事業への注力を鮮明にした。
総合電機メーカーはこれまで「総花経営」になりがちで、狭い国内市場に特色のない多くの企業がひしめく状況が続いてきた。しかし、「事業ごとに上位企業だけしか生き残れない」(業界関係者)という厳しい環境下、事業の選択と集中は避けられない時代になっている。
◇次世代半導体、液晶・プラズマパネル…事業ごとに再編・提携
電機各社が事業の選択と集中を進める中、次世代半導体、液晶・プラズマパネルなど事業ごとの再編や提携の動きが相次いでいる。技術開発などに巨額の投資が必要なうえ、激しい競争による価格下落で利益が得にくくなっているためで、国内市場が縮小する中、海外企業と連携する動きも強まっている。
再編の動きが急なのが数千億円規模の投資が必要な最先端半導体で、ソニーは07年10月に生産設備を東芝に売却し製造から撤退。東芝、NEC子会社の「NECエレクトロニクス」、富士通の3社は07年夏ごろから提携交渉を行ってきた。結果的に富士通はグループに加わらずに半導体事業を分社化したが、東芝には「富士通と再度、提携したい」との思惑があり、再度、提携を検討中だ。
薄型テレビでも、パネル生産の提携が活発化し、プラズマパネル生産は松下と日立が、液晶パネルもシャープと松下が他のテレビ各社に供給する形に再編されてきた。
一方、海外市場の伸びをにらみ、海外企業との提携の動きも進んでいる。原子力発電事業では、東芝が06年2月に米ウエスチングハウスを買収。その後、三菱電機は06年10月、仏アレバと提携し、06年11月には日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)が事実上事業を統合し、世界の原子力発電事業は、この3連合に収れんされる構図になった。
電機業界関係者は「事業再編は今後も進む。再編に加われない企業は舞台から降りるしかない」と話している。
▽JPモルガン証券・和泉美治シニアアナリストの話 電機メーカーはこれまで、右に倣えで同じ方向を向いて歩んできたが、最近は事業の取捨選択が進み、各社各様に進むようになってきた。業界の国際競争力を高めるうえで好ましい。激化する国際競争を勝ち抜くには、今以上に強い事業への集中投資と弱い事業の切り離しを進める必要があり、企業同士の事業提携や再編の動きにつながる可能性もある。
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