Saturday, May 31, 2008

丸紅元社員の稟議書偽造:出資金の運用実態なし、損失数百億円 自転車操業、償還に充て

丸紅元社員の稟議書偽造:出資金の運用実態なし、損失数百億円 自転車操業、償還に充て

 大手総合商社「丸紅」(東京都千代田区)の元担当課長(34)らが社内の稟議(りんぎ)書を偽造し、病院再生事業を巡る架空の投資話を持ちかけていたとされる問題で、元担当課長らは投資ファンドなどから集めた出資金を運用せず、そのまま償還に充てる自転車操業を繰り返していたことが分かった。丸紅ブランドの信用を悪用し、数百億円を焦げ付かせた不正は04年ごろに始まったとみられ、警視庁捜査2課は全容解明を進めている。【鳴海崇、杉本修作】

 中心だったのは、医療コンサルティング会社「アスクレピオス」=破産手続き中=の前社長(46)と、丸紅のライフケアビジネス部の元担当課長で医薬品研究開発メーカー「LTTバイオファーマ」(港区)元社長。元担当課長の同僚だった丸紅の元嘱託社員2人=ともに3月懲戒解雇=も関与が明らかになっている。

 関係者によると、前社長は04年9月にアスク社を設立。経営悪化した病院の再生事業などを対象に投資を募り始めた。その際、元担当課長は「丸紅が医療機器を納入するから」などと説明。20%程度の金利をつけて償還するとしていたが、実現できない場合でも丸紅が元金を保証するとして偽の稟議書や役員の印鑑を見せて信用させていた。商談には丸紅本社の会議室が使われることもあり「ライフケアビジネス部長」を名乗る別人とみられる男も顔を出したという。

 契約によれば、出資金はアスク社が管理する投資事業組合に入った後、アスク社と関係があるとみられる千代田区の建築コンサルティング会社などを通じて病院に貸し付けられる仕組みだった。しかし実際には丸紅の関与はなく再生事業のスキームも架空だった。自転車操業で順調に償還しているように見せかけていたため、米証券大手リーマン・ブラザーズなどから巨額の資金を引き出すことに成功していたとみられる。

 リーマンは5回に分け計約370億円を出資。約3カ月後に約50億円がいったん償還されたが、その後は焦げ付いたとして警視庁に詐欺容疑で刑事告訴している。
 ◇丸紅側争う姿勢--損害賠償口頭弁論

 リーマンの特別目的会社「エル・ビー・エー」(東京都港区)が丸紅に対し、焦げ付いた約320億円を含む計約350億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日、東京地裁(広谷章雄裁判長)で開かれた。丸紅側は「(元担当課長らが)提示した年利25%は利息制限法の限度(20%)を超えているのに、リーマン側が基本的な確認作業を怠った」などと主張、全面的に争う姿勢を見せた。

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