Friday, February 8, 2008

「残念でならない」=北の湖理事長一問一答-元親方ら逮捕

「残念でならない」=北の湖理事長一問一答-元親方ら逮捕
 7日、元時津風親方と力士3人の逮捕を受けて記者会見した日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)は、終始険しい顔で心境などを語った。一問一答は次の通り。
 (冒頭で文書を読み)長い歴史の中で、力士が逮捕された結果になり、まことに遺憾であり、残念でなりません。山本順一氏(元時津風親方)と事件に関与した力士は、真相解明に向けて今後の取り調べに協力するよう望みます。

-3力士の処分は。
 捜査当局の判断を見守りつつ、必要な判断をしていきたい。どういう状況か分かり次第きちっとやっていく。理事会で決めることになると思う。

-何が問題だったと思うか。
 どういう推移、流れだったのかはまだ分からない。憶測で物は言えない。一人亡くなっていますから、重大なことと受け止めている。

-再発防止に向けて。
 再発防止検討委員会がありますから、あらゆる状況、どういう状況だったかを踏まえて、今後は(このようなことが)ないように進めて、指導していかないといけない。

-角界に動揺が広がるのでは。
 心配だとは思うが、力士は土俵を中心に考えてくれると確信している。

-改めて斉藤さんへの言葉は。
 ご冥福をお祈りいたします。(了)

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相撲協会、文科省から外部理事設置の忠告

 日本相撲協会を監督する文部科学省は8日、同協会に外部から理事、監事を招くように忠告した。この日、協会の伊勢ノ海理事(元関脇藤ノ川)と九重理事(元横綱千代の富士)が同省を訪問。時津風部屋新弟子死亡事件で現役力士3人が傷害致死容疑で逮捕されたことを報告を受けた後、松浪健四郎副大臣が「アドバイスとして聞いてほしいが、理事会の在り方を検討してほしい。理事、監事がまわし組だけでいいのか」などと述べた。

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「本当のこと言って」と父 相撲協会に賠償訴訟を検討

2008年2月8日 17時47分

 大相撲時津風部屋の傷害致死事件で記者会見する、死亡した斉藤俊さんの父正人さん=8日午後、衆院第二議員会館
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 大相撲時津風部屋の傷害致死事件で、死亡した序ノ口力士、時太山=当時(17)、本名斉藤俊さん=の父正人さん(51)が8日、東京都内で記者会見し、元親方山本順一容疑者(57)らの逮捕について「(息子も)少しは無念さが晴れたのではないか。元親方には本当のことを言ってほしい」などと心境を語った。

 担当弁護士は「元親方だけでなく、日本相撲協会の考えも聞いてみたい」と話し、相撲協会に対して損害賠償請求の訴訟を検討していることを明らかにした。

 今回の事件捜査は初動でつまずき、逮捕まで七カ月余りと長期化。正人さんは「警察に不信感もあった。捜査が長くなれば不安になり、最後は何で逮捕できないのか怒りを感じた」と立件までの心情を吐露した。

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『やっと捕まったぞ』 前時津風親方逮捕 父の信念、結実

2008年2月8日 07時55分

亡くなった斉藤俊さんのことを思い、悔しそうな表情を見せる父正人さん=7日午後、新潟市内で
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 大相撲時津風部屋の序ノ口力士、斉藤俊(たかし)さん=当時(17)=が、けいこ場で急死して七カ月余り。角界を揺るがした事件は七日、名門部屋の前親方らの逮捕へと急展開した。当初は病死と判断され、「けいこ中の事故」と処理されるところだった十七歳の死。「俊のため、真実を知りたい」という、父親らの強い思いが愛知県警を動かし、制裁を目的とした行き過ぎた「しごき」の立件へ結びつけた。

 「俊、やっと捕まったぞ」-。前時津風親方の山本順一容疑者(57)や兄弟子三人が逮捕された七日夜、俊さんの父斉藤正人さん(51)は新潟市中心部にある親類宅でテレビのニュースに見入りながら、つぶやいた。

 「迎えに来て」。そんな息子の叫びを受け止められなかったことへの自責の念から自殺も考えたという正人さんを支えたのは、「俊のため、真実を知りたい」という強い思いだった。

 夕方からテレビニュースを見つめて知らせを待った正人さんは、俊さんの顔写真が画面に映し出されるたびに、口を真一文字に結んだ。

 午後七時五十分ごろ、以前から相談していた弁護士から逮捕の知らせを受けると、愛知県警に自ら電話を入れて確認。県警幹部から「逮捕しました」と正式に説明を受けると、我慢していた涙が一気にこぼれ落ちた。

 俊さんに角界入りを勧めたのは、正人さんだった。時津風部屋入門後、電話で何度も「辞めたい」と訴えた俊さんを「我慢しろ」としかった。死への暴行が始まった昨年六月二十五日の朝にも、「迎えに来て」と懇願する俊さんを、押しとどめた。

 亡きがらと対面した正人さんは言葉を失った。体には赤紫の内出血のあとが数十カ所。「けいこ中の事故」という山本容疑者の説明を信じられなかった。「事件に違いない。どうして解剖しないのか」。知人のつてをたどって新潟県警幹部に「死体をみてほしい」と頼み込み、新潟大での解剖にこぎつけた。

 一方で「『逃げろ』と言ってやれば死なずにすんだ」と自らを責めた。通夜の後「葬式の後で自殺しよう」とまで思い詰めた。その夜、夢に現れた俊さんが「来ちゃだめ」と語りかけてきた。跳び起きた正人さんは「真相が解明されるまでたたかおう」と決めた。

 長引く捜査にいら立ちながらも、愛知県警の捜査に協力、俊さんの生い立ちや既往症について時間をかけて説明した。人前に出るのは苦手だが、昨年九月には東京で記者会見を開いた。毎晩のように酒をあおっては「俊、ごめんな」と亡き息子に謝った。山本容疑者側からの示談持ち掛けを拒んでいるという。

 逮捕という節目を迎えたが、まだ「真相解明されたよ」と報告はできない。その日が来るまで、俊さんの遺骨を身近に置いておくつもりだ。

■名門の暗部にメス

 前時津風親方の山本順一容疑者の現役時代のしこ名は双津竜(ふたつりゅう)。一八五センチ、一七二キロの巨体を生かした右四つからの寄りを武器に小結にまでなった。

 一九八二年、三十二歳で引退。錦島親方として時津風部屋で後進の指導に当たり、二〇〇二年八月、元大関豊山の親方の定年退職に伴い時津風を襲名。昭和の大横綱双葉山が一九四一年に設立した名門部屋を継いだ。

 「寡黙で派手さはないが、こつこつ努力するタイプ。他人の苦労が分かる人だと思っていた」。山本容疑者を現役時代から知る、部屋の名古屋後援会の世話役をしていた男性(70)はそう評し「弟子が一度や二度脱走しただけで、あのようなことになったとは思えない」と驚きを隠せない。

 一方で、酒癖の悪さが一部で問題視されたことも。時津風一門のある親方は「酔うと若い衆を瓶で殴ることもあったし、大声で説教するところを何度も見た。たちが悪く酒の席では皆に敬遠されていた」と明かす。

 山本容疑者は日本相撲協会を解雇された昨年十月以降、自宅とは別の東京都内のマンションにこもり、人目を避けるように生活していた。妻(49)によると「『かわいがれ』などとは言ってない」と暴行の指示は否定し、「俊(斉藤さん)はセンスがあった。関取にもなれたのに…」と落ち込んだ様子でつぶやくこともあったという。

■ぶつかり『異常に長かった』  兄弟子一問一答

 傷害致死容疑で逮捕された伊塚雄一郎容疑者(25)=しこ名・怒濤(どとう)=や、斉藤さんへの暴行に加わり傷害容疑で書類送検される見通しの兄弟子二人は昨年十二月と今年一月、本紙に対し金属バットや木の棒で殴ったことを認め「あくまでけいこ。リンチではない」と説明。三十分のぶつかりげいこについては「異常に長かった」と通常のけいこを逸脱していたことを認めていた。一問一答は次の通り。

 ――当日(昨年六月二十六日)の斉藤さんに対する「けいこ」はどのような内容だったのか。

 伊塚容疑者 (斉藤さんは)自分で起きてきてまわしを着け、午前七時半ごろには、しこを踏んでいた。ぶつかりげいこ中、ビンタやけりはあったが、それは相撲界では普通。自分は金属バットで尻を二、三発殴ったが、親方に「(バットは)やめとけ」と言われ、部屋に備えている木の棒にした。

 ――三十分のぶつかりげいこは、リンチではなかったか。

 兄弟子A(27) けいこだ。リンチではない。

 兄弟子B(28) 普通は五分くらいだから異常に長い。五分でもきついくらい。(斉藤さんは)兄弟子を押し切ったところで倒れた。

 ――死亡前日(六月二十五日)、部屋を逃げ出した斉藤さんに暴行を加えたのか。

 兄弟子B (斉藤さんは)親方の説教の途中に正座を崩しただけでなく、一時間も二時間も「(部屋を)やめる」「やっぱり続ける」とあいまいな態度を続けた。誰でも腹が立つ。それで親方がビール瓶で殴った。

 ――兄弟子たちはどうしたのか。親方の指示はあったか。

 伊塚容疑者 合わせて三人くらいの兄弟子で殴ったりけったりした。バットは使っていない。自分は聞いていないが、ほかの兄弟子によると、親方から「教えてやれ」と指示があったようだ。

 ◆ スポーツジャーナリストの二宮清純さんの話 父親が新潟大に行政解剖を依頼しなかったら、死人に口なしということで今回の逮捕もなかった。急死した直後に司法解剖をしなかったのは愛知県警の失態。日本相撲協会は、自ら真相究明に乗り出すべきだったが、対応は後手後手に回った。事件で業界の密室性が明らかになった。伝統を守るには、悪い部分を改革していくことが必要。協会は自浄能力を発揮すべきだ。

 ◆漫画家で日本相撲協会の再発防止検討委員会委員のやくみつるさんの話 先場所は朝青龍の復帰で「にわかバブル」のように盛り上がったが、元親方の逮捕で、相撲協会はどん底に突き落とされたといっていい。失った信頼を回復するには、襟を正すことが必要。自らを律することができる集団だと世間に知らしめなければならない。そのためには、協会執行部が自分たちの言葉で、相撲界全体がどれだけ厳しい状況にあるのかということを表明すべきだ。

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時津風親方を逮捕、縛りつけての暴行も

元時津風親方の逮捕秒読みに大勢の報道陣が集まり、その前をパトカーが巡回
元時津風親方の逮捕秒読みに大勢の報道陣が集まり、その前をパトカーが巡回

 大相撲時津風部屋の序ノ口力士、時太山(当時17、本名斉藤俊さん)が昨年6月に急死した問題で、愛知県警捜査1課と犬山署は7日、制裁目的の暴行などで死亡させた傷害致死罪で、先代時津風親方の山本順一容疑者(57=元小結双津竜)と兄弟子3人を逮捕した。愛知県警によると、山本容疑者は、斉藤さんをてっぽう柱に縛るよう指示していたという。力士の死亡問題で、逮捕者が出るのは初めてで、度を越したけいこに対し、捜査のメスが入った。

 ついに土俵に捜査のメスが入った。逮捕されたのは山本容疑者と兄弟子の西幕下58枚目明義豊こと木村正和容疑者(24)、東序二段筆頭怒濤こと伊塚雄一郎容疑者(25)、西序二段86枚目時王丸こと藤居正憲容疑者(22)の計4人。この日午後、愛知県警の任意同行に応じ、山本容疑者は午後7時59分に愛知県警本部で、兄弟子3人も同50分と54分に犬山署と春日井署で、傷害致死の疑いで逮捕された。

 この日会見した舘喜代孝捜査1課長によると、昨年6月25日昼に愛知県犬山市の部屋宿舎から逃げ出した斉藤さんを兄弟子たちが連れ戻し、同日夜に山本容疑者が説諭しながら、額をビール瓶で殴打。さらに兄弟子たちに「おまえらもやってやれ」と指示した。その際に「てっぽう柱に縛り付けておけ」と言ったという。斉藤さんは約20分、てっぽう柱にひもで縛られるなど、木の棒まで使った暴行は午後10時ごろまで続けられた。

 翌26日は午前11時から兄弟子数人で囲み、通常5分程度のぶつかりげいこを30分以上続けた。数十発の張り手や蹴りに、この日は金属バットでの暴行も加わった。「暴行を受けてる間はほとんど無言だった」(同課長)と無抵抗で耐える斉藤さんは、多数の皮下出血やあばら骨を折るなどした。

 同県警では、現役力士にぶつかりげいこをしてもらい、血液中の乳酸値などを測定。「ぶつかりげいこの範ちゅうにないと判断した。それを立証するため慎重な捜査を行った」(同課長)。その結果、30分に及ぶぶつかりげいこが異常であると判断。2日間にわたる暴行が斉藤さんを死に至らしめたと結論付けた。

 これまでの調べに対し、山本容疑者はビール瓶で殴ったことは認めたものの「暴行の指示はしていない」と主張。だが同課長は「相撲の世界は親方が絶対的な存在。親方の指示なしにはありえなかった」と、山本容疑者を厳しく非難した。また兄弟子のうち伊塚、藤居の両容疑者は制裁目的の暴行であったことを認めたが、木村容疑者は殴るなどの行為は認めているが「しつけと教育だった」としている。

 力士の死亡例は、平成以降でも12件あり、けいこで倒れた力士は、けいこの前後も含めて斉藤さんで5人目。しかし、国技たる相撲のけいこ場は「聖域」とみなされ、これまで捜査機関が、本格的に問題を調べることはなく、逮捕状が取られたのも今回が初めてだ。行き過ぎた“かわいがり”はけいこではなく犯罪―。警察による厳しい視線が向けられることになった。

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