Thursday, February 7, 2008

新日鐵が住金の筆頭株主に 3社統合に向けて動き出す

新日鐵が住金の筆頭株主に 3社統合に向けて動き出す | 東京レポート
[特別取材]

2008年01月15日 10:57 更新

 2008年。新日本製鐵の三村明夫社長(67)は、M&A(合併・買収)戦略の最大のヤマ場を迎える。世界首位のアルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)の買収の脅威に対抗して、国内外で提携を進めてきた防衛策の総仕上げが、住友金属工業、神戸製鋼所との経営統合であるためだ。

統合の布石か

 新日鐵、住金、神鋼の高炉3社は07年12月19日、相互に株式を追加取得すると発表した。新日鐵と住金は1,000億円ずつ株式を取得し、事業会社としてそれぞれが筆頭株主となる。

 3社は、08年3月末までに市場で株式を取得。新日鐵の住金への出資比率は5%から9.4%に高まり、現在の筆頭株主である7.5%の住友商事を抜く。住金の新日鐵への出資比率も1.8%から4.1%になり、3.5%の韓国ポスコを抜いて事業会社として筆頭株主になる。

 新日鐵と神鋼、住金と神鋼もそれぞれ150億円ずつ株式を追加取得。神鋼への出資比率は新日鐵、住金ともに3.4%になる。
            
 「いよいよ新日鐵が3社統合に向けて動き出した」。業界は色めきたった。
 最大の注目点は、新日鐵が住金の筆頭株主になることだ。

 住金は住友グループの中核で、住友商事が7.5%を保有する筆頭株主。02年に資本提携に踏み切ったことで、新日鐵は現在、5.0%を保有する第3位の株主だった。持ち合いを強化した結果、新日鐵が9.4%になり、住商を抜いて筆頭株主に躍り出るのである。

 三井住友銀行が信託口で1.8%、住友信託銀行が1.7%保有しており、住商分と合わせると11.0%。住友グループの一角にとどまるとはいえ、筆頭株主の座を明け渡すことの意味は大きい。

 半ば全面統合を諦めていた新日鐵にとって、JFEを突き放し、アルセロール・ミタルへの対抗軸を構築する絶好のチャンスだ。新日鐵が住金の筆頭株主になることで、3社の合併・統合は秒読み段階に入ったといえる。

 統合に向けて動いたのは前門の虎(鉄鋼最大手のアルセロール・ミタル)、後門の狼(資源最大手のBHPビリトン)の脅威だった。

ミタル買収の脅威

 鉄鋼業界の指標のひとつが粗鋼生産量。このところ急激な伸びを示していて、世界の粗鋼生産量は10億トンを超えている。そのシェア獲得を目指して合従連衡を繰り広げているのが、世界的な鉄鋼再編の構図だ。

 粗鋼生産量世界一のアルセロール・ミタルは、インド人の大富豪ラクシュミ・ミタル氏が率いるグループだが、それはM&A(合併・買収)の歴史そのものだった。

 インドネシアで丸棒製造の小さな会社から出発し、旧ソ連圏や中南米の鉄鋼会社を次々と買収して規模を拡大してきた。05年、米の鉄鋼大手ISGを買収することで世界一に。06年には、世界2位のアルセロール(ルクセンブルグ)を買収。粗鋼生産量の10%を超えるシェアをもつ巨大鉄鋼会社の誕生だ。
 20%のシェア獲得を目指すミタル氏が、次の標的にしたのが、自動車用鋼板や油田用の継ぎ目なし鋼管といった高級鋼材に強い、日本の大手高炉メーカーである。

 M&Aを繰り返すミタル氏に対して、買収防衛策を打ち出したのが新日鐵、住金、神鋼の3社。06年になって、この3社は02年以来進めてきた資本提携を強化。そして08年、新日鐵が住金の筆頭株主に躍り出る。

 かつて日本の鉄鋼業界は、高炉5社と呼ばれた。川崎製鉄とNKKが統合してJFEホールディングスが誕生。それに対抗して、新日鐵と住金、神鋼の3社が相互に資本提携し、新日鐵を中心としたグループを形成してきた。さらに、アルセロール・ミタルの敵対的買収をにらみ、全面統合へ向けて大きく舵を切った。統合が実現すれば、国内の鉄鋼業界は、新日鐵とJFEの2強体制に完全に移行することになる。

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