教育情報衛星ネット:廃止へ…40億円無駄に 文科省
衛星通信を利用して、生涯学習番組などを全国に発信する文部科学省の教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)が08年度、廃止されることが分かった。99年7月に始まり、少なくとも40億円以上が投入され、ピーク時に公民館や学校など2177カ所に受信設備が置かれた。しかし最近は「放映の際、視聴者がいない」と指摘されていた。インターネットの普及のほか、番組内容の魅力の乏しさやPR不足などが背景にあるとみられる。
エル・ネットは全国一律配信で、主に生涯学習振興の効果を高める目的で導入された。日本と外国の文化の違いを学ぶ番組のほか、文科省主催の各種会議やノーベル賞受賞者の講演会なども放送された。
最盛期に35カ所あった送信局や受信局は、ここ数年、減少傾向にあり、現在は送信局23カ所、受信局約1500カ所。
文科省によると、国立教育政策研究所が衛星通信の回線使用料(07年度は2億3000万円)を負担。送信局で3000万~6000万円、受信局でパラボラアンテナ、パソコン、モニターなどに50万~100万円の設置費用が必要で、少なくとも42億円はかかった計算になる。
会計検査院の03年度決算検査報告では「(受信局で)番組の放映を全く行っていなかったり、放映の際に視聴者がいない」「放送スケジュールなどを受信するパソコンまたはプリンターが破棄されている」などと指摘され、有効活用を求められていた。
設置から10年もたたずの廃止。文科省は「メンテナンス費用がかかる一方、インターネットの普及も進んだ。費用対効果から見て、役割は終えた」と説明する。「宝の持ち腐れ」との指摘については「工作教室などを放映した『子ども放送局』などかなり人気の高い番組もあった。また地方の人が著名人の講演を聞けるなど、一定の役割を果たしたと思っている」と話している。【高山純二】
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