食卓から“乳離れ”…牛乳消費低迷もバター不足の怪
飼料高騰で酪農家の廃業相次ぐ
国内のバター不足が深刻だ。業務用輸入バターの急騰で国産にシフトしたものの、原料となる加工用生乳も不足していたことが原因だ。一方で牛乳の飲料消費は縮小の一途をたどり、需要拡大に躍起な関連団体は6月1日を「牛乳の日」と制定し、都心で一大イベントを開催したばかり。飼料高騰による生産コスト上昇で廃業に追い込まれる酪農家も多いなか、牛乳が飲まれないのに、バターが足りないのはなぜか。
「バター不足を解消できない最大の原因は、長引く牛乳の消費低迷を受け、生産者団体が2006年に行った生乳の生産調整。乳牛は搾乳しないと乳腺炎になるため放置もできず、牛自体を処分せざるを得ない酪農家も多く出ました。乳牛は生き物。1度減産してしまったものは、急に増産できないのです」
こう解説するのは、酪農学園大理事長の麻田信二氏。北海道では全酪農家7800戸で減産が行われ、100頭以上を処分した酪農家もあったという。
しかし、牛乳消費はこの減産も追いつかないほど激しい需要減が続き、昨年春には大量廃棄の事態に追い込まれている。
今になって「バターが足りない」といっても、乳牛は一人前(?)に育つまで2年はかかるため急な増産は不可能。減りゆく牛乳需要に対応できても、深刻なバター不足には当面打つ手はないというわけだ。
バター不足を引き起こした原因について、日本酪農乳業協会の担当者は、「昨年春のオセアニア大干ばつで、乳製品の最大輸出国である豪州の家畜飼料が壊滅。輸出用の乳製品の生産が激減し、中国などの需要急増も重なったことで、輸入バターの価格が急騰した。国産の需要が一気に高まった結果、国内の在庫が底をつき、原料の加工用生乳の生産も追いつかなくなった」と話す。
これまでは、過剰生産された余剰の生乳がバターなどに加工され、在庫管理されてきたが、それも適正在庫を大きく上回り、ついには生乳自体の生産調整まで行われた。ところが前代未聞の国産バター需要増で、その在庫分すら一気に底をつき、かといって先の理由で増産にも対応できない。
さらに、ここにきて肝心の牛乳までも、品薄になる可能性が指摘されている。
酪農団体による今年度の生乳生産計画は、バター不足解消を目的に、これまでの減産から一転して2.4%増。しかし、バイオエタノール燃料増産による世界的な飼料高騰の経営難で、毎年1000戸もの酪農家が廃業に追い込まれており、増産どころか2カ月連続の減産が避けられない見通し(北海道除く)で、夏に向けての深刻な牛乳不足が予想されているのだ。
農畜産業推進機構は、ウルグアイ・ラウンドによる今年度の乳製品最低輸入枠の第1回を4月に前倒し、4000トンを緊急輸入。業務用バターの供給は多少改善しつつあるものの、中小の菓子メーカーなどには行き届かず、数少ない家庭用バターの買い占めも続いている。バターも牛乳も、庶民から遠い存在になってしまうかも。
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